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伝音性難聴

伝音性難聴とは外耳と中耳に障害がある場合に起る難聴です。通常この難聴による聴力の低下は70デシベルを超えることは無く、 これだけで高度の難聴になることはありません
例えば耳栓をしても大きな音は聞こえてしまいますし、どんなに耳に蓋をしても全く外部の音が聞こえなくなることはありません。
これは通常の外耳から内耳を経る経路ではなく、大きな音が直接頭蓋骨を振動させることによって内耳のリンパ液が振動し有毛細胞が興奮することで 音を知覚することになるからです。
多くの場合医学的な治療を受けることにより聴力を回復させることが出来、もし回復しない場合でも一般的に 補聴器の効果が期待できるタイプの難聴です。 昔のDr.はこの難聴にしか補聴器は効果がないと言われる方が多いものでした。

<純粋な伝音難聴のオージオグラム>


◆先天性奇形◆
外耳道が欠損し、閉鎖された奇形。この場合ほとんどの例で中耳奇形も伴います。外耳道閉鎖は骨性閉鎖が大部分を占めるそうです。
中耳奇形は@鼓膜欠如A耳小骨奇形(欠如、奇形、ツチ骨とキヌタ骨の癒合、キヌタ骨とアブミ骨連鎖離断、アブミ骨固着B顔面神経走行異常C耳管閉鎖など。 聴力低下は平均で50デシベル以上の伝音障害が多く見られます。

◆耳垢栓塞または外耳道ない異物
外耳道が耳垢や他のものによって閉鎖されることで起こる難聴です。経験から耳垢が柔らかい方のほうが詰まりやすいように思われます。 自分で耳掃除をするのが難しい高齢の方には、半年に一回くらいの耳鼻科の受診をお勧めします。

◆鼓膜穿孔◆
鼓膜が損傷された場合に起こる難聴です。損傷の大きさに比例して聴力の低下も大きくなります。
鼓膜の損傷によって伝導率が下がることと、鼓膜の穴から直接蝸牛の前庭窓と蝸牛窓に同位相の音が伝わり、蝸牛基底膜の振動を妨げることにも起因しています。

◆急性中耳炎◆
幼児に多く、感染の経路は耳管を通じたものが最も多く、鼓膜穿孔があれば外耳道からも感染の可能性が出ます。症状は発熱や痛みなどがあり、受診の確立も高く その後の聴力の低下も少なく、症状が急峻な分治療による改善も見込める症状です。

◆滲出性中耳炎◆
幼児と高齢者に多く、10歳を過ぎると発症しにくくなります。
原因は耳管狭窄、程度の軽い急性中耳炎の不完全治癒、アレルギー体質、加齢による耳管機能低下などで、耳閉塞感、自声強調、耳鳴り、難聴が見られ、鼓膜は光沢を失い 薄暗く見えます。滲出性中耳炎では痛みを伴わないのが一つの特徴です。

◆慢性中耳炎◆
大部分は急性中耳炎の不完全治癒や再発を繰り返すことで慢性化したものです。症状としては粘液性の膿のような耳漏や、耳痛、頭重感など。鼓膜に穿孔が見られることも多く、この場合は穿孔が閉鎖しないことも多いようです。

◆真珠腫性中耳炎◆
鼓膜の一部の組織が耳の中にめりこんで真珠腫という宝石の真珠のような色をした病巣をつくり、側頭骨を破壊しながら発達するもので、原因ははっきりしていません。症状は悪臭を伴う耳垢が出たり、耳鳴り、頭痛、難聴などで、骨を破壊する力が強く耳小骨や顔面神経管などの骨を壊し、顔面神経麻痺、内耳炎、脳膜炎、脳腫瘍などを併発することもあり、聾になることも生命にかかわることもあるため、早めの治療が必要です。

◆耳管狭窄症◆
耳管に狭窄があって鼻腔と鼓室との交通が遮断されてしまうと、外耳と鼓室内の気圧調節が出来なくなって鼓膜の振動が妨げられます。又、鼓室内の分泌物を鼻腔に排泄することが出来なくなり、中耳炎の原因にもなります。

◆耳小骨連鎖の異常◆
耳小骨に病変があったり離断がありますと、伝音性難聴の中では最も高度な聴力低下を起こします。潜伏性の中耳炎や頭部外傷が主な原因だと思われます。